2016年度第1回例会は、6月25日(土)に東京農業大学世田谷キャンパスの横井講堂にて開催されました。朝から梅雨模様でしたがなんとか雨に足下をぬらされることなく、90名の参加者を迎えて盛会となりました。

 13時より関東支部長の西村敏英先生による開式の挨拶に続いて、3件の受賞(記念)講演を開催しました。2016年度日本農芸化学功績賞を受賞されました福田雅夫先生(長岡技術科学大学)「微生物による芳香族化合物分解システムの生化学的・分子生物学的解明」では先生が長年取り組まれてきた、あまり好ましくない化合物の微生物による分解に関して、経緯から最新の取り組みまでをご講演いただきました。次に2016年度日本農芸化学奨励賞を受賞されました浅水俊平先生(東京大学大学院農学生命科学研究科)「放線菌由来窒素含有天然生物活性物質の生合成に関する研究」、興味深い構造を有する天然有機化合物がどのように生合成されるのかを解説していただき、新しい化合物の創成へと繋がる今後の進展が期待される内容をご講演いただきました。続いて富田武郎(東京大学大学生物生産工学センター)「アミノ酸代謝に関わる酵素に関する構造生物学的研究」のご講演では、美しい酵素の機能を司る構造生物学的な内容についてご講演いただき、アミノ酸代謝という生物の根幹を明らかにするべく今後のご研究の進展が期待されました。

 休憩をはさんで後半では、「微生物の代謝と天然物化学」と題するシンポジウムを開催しました。東京大学薬学系研究科の岡田正弘先生「翻訳後修飾によるトリプトファンのイソプレニル化」のご講演では、微生物の生活環におけるペプチドのイソプレニル化システムが多様な微生物に普遍的に存在している可能性についてお話いただきました。筑波大学の野村暢彦先生「細菌の細胞死とバイオフィルム~One for all~」のご講演では、バイオフィルムの形成過程を可視化する技術や、微生物間の信号のやりとりについて動画などを含めてわかりやすく解説いただきました。東京大学生物生産工学研究センターの葛山智久先生「放線菌由来環状天然化合物の骨格形成機構」のご講演では、放線菌が二次代謝産物をいかにエレガントに作り上げていくのかについて、一見不思議とも思える酵素の力をお話し頂きました。東京農業大学の阿部尚樹先生「食用茸成分を用いたケミカルジェネティクス研究ーvialinin類が導く新たなTNF-α産生・放出制御機構の解明ー」では、中国産の茸から新規に見いだされた化合物の強力な生物活性から始まり、ケミカルバイオロジー的アプローチによる標的分子の解明と、新たなTNF- の産生、放出制御の可能性についてお話しいただきました。いずれの発表も大変興味深く、微生物の生きている世界を垣間見ることができる活発な議論が行われました。

 例会終了後、レストランすずしろにて行われた懇親会では、講演者7名のほか41名のご参加をいただき、例会に引き続き講演者と参加者との間で活発な議論と情報交換が行われ、とても有意義な例会となりましたことを報告いたします。

(矢島新)

会場の様子

受賞講演
 

シンポジウム
 

 

懇親会

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